ミャンマー調査報告  第1回 敬虔なる仏教徒の国ミャンマー

東南アジアの国ミャンマー
4月1日の総選挙で民主化運動の指導者アウンサン・スーチー女史が当選し、大きなニュースになりました。
一昨年の秋には20年ぶりの総選挙も行われ、民主化と自由化が進みつつあります。
今回のスーチー女史の当選はその大きな一歩になりそうです。
また、政治だけではなく経済も、今後アメリカや日本による経済制裁の解除そして援助の開始により発展が見込まれています。
ミャンマーは今、東南アジアで最も注目されている国と言えるでしょう。
3月7日〜19日の日程で、このミャンマーに、国際の所属教員の杉浦准教授と私金丸が調査に行ってまいりました。
今回は、その調査レポートをお届けしたいと思います。




第1回 敬虔なる仏教徒の国ミャンマー



ミャンマーでまず最初に気づくのは、とにかく至るところに寺院や仏塔が多いことです。
最初に着いた最大都市のヤンゴンはもちろん、地方都市にいっても数多くの寺院や仏塔があります。
しかもまた、それらがとても大規模できらびやかに飾り付けがなされています。



ミャンマー最大の都市ヤンゴンにあるシュエダゴーン寺院


ミャンマーで最も大きいシュエダゴーン寺院には中央に高さ100メートル近くある巨大な金色の仏塔があり、その先端には純金ばかりかルビーやエメラルドという宝石が装飾されているといいます。
また、多くの寺院や仏塔は金箔で覆われています。
驚くことに、これらの寺院や仏塔は人々の寄付で造られ、そして維持されているということです。
というのも、ミャンマーの人々が信じる仏教の教えでは、現世のお金や財産は死んだら持って行けないが、生きている間に寺院や僧侶に施し(喜捨)を行うことで功徳がなされ、死後よりよい天上の世界に行けると信じられているからだということです。
したがって、お金持ちほどたくさん寄付をし、巨大な仏塔を建て、豪華な装飾にお金を使います。




また、僧侶たちは毎朝、家々をまわって「托鉢」を行います。鉢を持って、ご飯やおかず、飲み物などを施してもらうのです。
こうして僧侶たちはその日の食事を賄うわけですが、驚くのは、早朝からきちんとご飯を炊きおかずを用意して、托鉢の僧侶たちを待っている、ミャンマーの庶民の人々です。
中には、上の写真のように、1000人にものぼる僧侶たちに毎朝、食事を用意している施設もあります。




古都バガンの風景。原野に見渡す限りの寺院と仏塔の数々。


ミャンマー中部の街、バガンというところは11〜13世紀にかけて都だったところです。
現在は大都市の面影はあまりありませんが、驚くのは、広大に広がる原野に大小さまざま、無数の仏教寺院と仏塔の遺跡群です。
その数は3000近くあるといいます。
このように、ミャンマーでは各地にこうした仏教寺院や仏教遺跡がみられます。
人々に広く根付いた仏教信仰は、長い歴史を経て継承されてきたものなのです。



2007年。ヤンゴンで反政府デモが起き、武力鎮圧されました。
このデモの発端になったのは、多数の僧侶たちによる沈黙の行進だったといいます。
それは軍事政権による民衆をないがしろにした政治が仏の教えに反するという無言の抗議でした。
それに野次馬も含めた市民が加わりデモが大きくなったのです。
はじめは僧侶を先頭とする反政府デモに、治安部隊も静観を決め込んでいました。
ところが、しだいに群衆の規模がふくれあがるのに対して、ついに治安部隊が発砲を始めたのです。
このとき、多数の僧侶が犠牲になりました。
ミャンマーでは、人々の心と生活に、広く深く仏教の教えが浸透しています。
こうした敬虔な仏教徒が多く、そして僧侶たちが深く尊敬されている国で、この事件が国民に与えた失望感はいかほどだっただろうかと想像してしまいました。